1.5万円でノイズキャンセリングも高音質コーデックも全部入ったイヤホンを探しているなら、一旦立ち止まってほしい。Soundcore Liberty 5のパッケージにある「最大48時間」という数字を見て、一日中快適に使えると信じ込んでいない?
その看板を信じて機能をフル活用した瞬間、再生時間は本体たった5時間に縮む。
買い物の損得を分けるポイントは派手な機能名ではなく自分の使い方との一致度にある。手元のスマホや再生モード次第で、この製品の使い勝手は天国から地獄まで転がり落ちるはずだ。
48時間が5時間に縮む電池の罠
通常モードの本体12時間とケース込み48時間という数字は余計な機能を全て眠らせたときの数値にすぎない。ノイズキャンセリングを入れるだけで、本体の駆動時間は8時間に落ちる。
さらに立体音響のDolby Audioまで重ねると、本体バッテリーはわずか5時間で底をつく。朝の通勤から大学の講義を挟んで夕方まで使えば、途中で確実に沈黙する計算になる。
急速充電で10分繋げば5時間鳴ると胸を張られても、それは通常モードの話だ。
高機能の看板を並べておきながら、機能を使うほど電池が猛スピードで削れていく設計には首をかしげたくなる。君ならこの持ち時間を許容できる?
電車の轟音を消して風を残す遮音
ウルトラノイズキャンセリング3.5という大仰な名前も、消せる音の方向性を把握しないと肩透かしを食らう。電車の低い走行音やエアコンの低い唸り声には強烈に作用する。
だが駅のホームで吹く風切り音や、周囲の話し声は耳元へ普通に通り抜けてくる。あらゆる雑音を等しく無音にしてくれる魔法の耳栓を想像すると、届いた初日に固まるはずだ。
全部を均一に消すわけじゃない。
音作りの設計自体は通勤電車で響く低音を気持ちよく聴かせる方向へ綺麗に揃っている。9.2ミリのドライバーに加えて、内部に2本のダクトを通すバスレフ構造を組み込んできた。
低音をしっかり響かせる空気の通り道を筐体の中に作ったわけだ。騒がしい車内で疾走感のある楽曲を鳴らす用途なら驚くほど気持ちよくハマるだろう。
iPhoneを門前払いする高音質
高音質の代名詞として掲げられているLDACにも、大きな落とし穴が口を開けている。iPhoneやiPadなどのiOS端末はどれだけ願ってもこの高音質通信を受け付けない。
手元のスマホがiPhoneなら、接続は問答無用で標準的な通信に縛られる。
Androidを使っていても、パッケージから出して耳に突っ込んだだけでは動かない仕様だ。専用アプリを導入してファームウェア更新を済ませ、設定画面から手動でスイッチを入れて初めて本来の音質に辿り着く。
初期設定の手間までユーザーに丸投げする構成には思わずため息が出る。
救いがあるとしたら、パソコンとスマホの2台に同時接続しながら高音質機能を維持できる点にある。作業用のノートPCと手元のスマホを行き来する日常なら、この接続設計は大いに助かるだろう。
濡らせないケースと保証の境界
防水仕様の表示にも、日常のトラブルを招く罠が潜んでいる。IP55の防塵防水を掲げているけれど守られているのは耳につけるイヤホン本体だけだ。
充電ケース側には防水性能が一切ない。
ジムで汗をかいたイヤホンをそのままケースに戻したり、雨の日に濡れた手でケースを握れば普通に壊れるリスクを抱えている。しかも公式の保証規約を開けば、水没による故障は保証の対象外と冷徹に書かれていた。
壊れたときに泣きを見ないためにはケースの防湿管理まで自己責任で引き受ける覚悟がいる。
この14,990円という定価のうち、僕が納得して払えるのは低音ダクトの筐体設計と2台同時接続の利便性に対してだ。背伸びをした機能の看板だけに惹かれているなら、このイヤホンは選択肢から外した方がいい。
対応するAndroidを持ち、毎日の電車移動で重低音を鳴らし切りたい人だけが購入ボタンを押すべき相棒になる。



